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生命機構化学研究室(古川准教授)

【研究分野:タンパク質化学/生化学/生物物理化学】

データ

准教授

古川 良明
フルカワ ヨシアキ

助教

徳田 栄一
トクダ エイイチ

Introduction

  私たちの研究室では、タンパク質立体構造の構築原理を明らかにすることで、さまざまな生命現象を分子レベルで理解したいと考えています。そのために、現在は次の2点についての研究を進めています。

1:タンパク質の立体構造変化がもたらす生命現象の破綻メカニズム
  タンパク質は適切な立体構造を構築することで生理機能を発揮しますが、変異や環境の変化が引き金となってその構造を変化させ、細胞内外で線維状に凝集することがあります。このようなタンパク質線維が脳・神経組織に蓄積すると神経細胞死の原因となり、アルツハイマー病などの神経変性疾患を引き起こすとされています。私たちは、神経変性疾患に関わるタンパク質の線維化について、in vitro/in vivo両面からその研究に携わり、なかでも特に「シーディング」と呼ばれる現象に着目して、神経変性疾患の感染危険性や病態の広がりを制御するメカニズムについて議論をしています。

2:細胞内における銅イオンの輸送ネットワークの作動機序解明
  銅イオンは生命活動に必須の構成成分で、さまざまなタンパク質と結合することにより、酵素活性の中心として機能しています。生体内での存在量は微量なレベル(成人で80 mg)に調節されていますが、遺伝的要因や過剰な摂取・欠乏による濃度異常は多くの疾患の原因となります。多くの生命現象において銅イオンの生理・病理的役割が重要視される一方で、細胞内への銅イオン導入経路や、細胞内での銅イオン輸送経路については、未だ明らかでない点が多く残されています。そこで、タンパク質に銅イオンが供給される細胞内ネットワークの全容と、その制御メカニズムを分子レベルで明らかにすることを目指しています。

研究説明図

最近の研究より

化学修飾が制御するタンパク質線維の構造と神経変性疾患
  多くの神経変性疾患では、その病変部位(脳・脊髄などの神経組織)に線維状のタンパク質凝集体の異常蓄積が認められます。特に、タウと呼ばれるタンパク質の線維が観察される神経変性疾患はタウオパチーと呼ばれ、その中にはアルツハイマー病(記憶障害)やピック病(人格障害)などが含まれます。興味深いことに、病変部位に観察されるタウ線維の形態は、症状によって大きく異なることが報告されています。しかし、タウがどのような形態を有する線維となるのか、その制御メカニズムについては明らかでありませんでした。本研究で私たちは、タウに存在するシステイン残基に着目し、それらがジスルフィド結合を形成するか否かによって、線維の形態が全く異なることを明らかにしました。つまり、タウオパチーにみられる症状の多様性は、ジスルフィド結合依存的なタウ線維の形態多様性によって説明できるのではないかと考えています。
The Journal of Biological Chemistry 2011 Vol.286 pp.27236-27246

研究説明図01

最近の研究より

タンパク質線維の構造伝播と神経変性疾患
  神経変性疾患に観察されるタンパク質線維は「感染」能力を持っています。つまり、タンパク質の水溶液にタンパク質線維を少しだけ混入させると、線維が核となることで、水溶性だったタンパク質が急速に線維化します。これは、食塩の水溶液に種結晶を入れると、結晶化が一気に進む現象とよく似ており、どちらもシーディングと呼ばれます。
  では、タンパク質線維化のシーディングは、生体内でも起きるのでしょうか?私たちは、細胞内にタンパク質の線維を導入する手法を開発し、細胞内でのシーディングを再現することに成功しました。このことは、体内で線維が形成すると、線維化が一気に進行し組織に拡がることを暗示しており、発症から急速に症状が悪化する神経変性疾患の特徴をよくとらえた分子現象であるといえます。本論文はJBC誌のPaper of the Weekに選ばれました。
The Journal of Biological Chemistry 2011 Vol.286 pp.18664-18672

研究説明図01

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