化学科を目指す皆さんへ

『化学』は全ての基礎で、面白くて役に立つ

『化学』は、原子・分子を基本単位とする物質を系統的に取り扱う、世の中に欠くことのできない深く、かつ役に立つ学問です。これまでに『化学』は大きく発展し、物理概念を具体化する物質を化学合成によって生み出し、生命現象の基本単位を明らかにする上で、さらには星々の誕生の神秘を分子レベルで解き明かすなど、物理、生物、地学を超えて広範な学問の基礎を与えるまでになりました。『化学』の発展はその勢いをさらに増し、最先端の現代科学の進展の中で一層その重要性を増し、現代社会のいろいろな課題の克服に役立っています。

歴史をひも解くと、19世紀末以来の食料需要を対応可能にしたのは、化学者フリッツ・ハーバーとカール・ボッシュによるアンモニアの化学合成法ですし、ナイロンをはじめとする化学繊維は、麻などの天然素材に代わって衣服の質を劇的に改善し、生活向上を牽引してきました。一方、これからの『化学』には、地球の温暖化問題や太陽エネルギーの活用を含めた、未来社会における環境・エネルギー課題を解決する大きな役割が期待されています。

このように魅力あふれる『化学』に対して、高校までの学習では、物質の名称や性質を記憶しなければならないことが多い、との印象をもっているかもしれません。たしかに、物質の多様性は化学の魅力を倍加してくれる点ですが、多彩な物質を貫く考え方の基本を正しく理解すれば、個々の物質を記憶する必要はなくなり、物質をもっと多角的に捉えることができるようになります。これまで化学が大好きなみなさんはもちろん、化学が記憶中心だったと感じているみなさんにも、物質の多様性を貫く『化学』の基礎力を楽しみながら学んでもらいたいと願っています。

『化学』は、産業社会への接点が広いので、大学で学んだ『化学』の基礎力は、みなさんの人生を、長い時間にわたって豊かで楽しくしてくれることでしょう。それは『化学』の考え方が役に立つばかりでなく、いろいろな分野との接点に新しい『化学』の課題が見つかるので、『化学』のアプローチが問題解決を助けてくれるからです。大学教育で、何をきちんと学んでおくか、それは『化学』が一番です。もちろん、学ぶ過程では、戸惑いも感じることもあるかもしれませんが、化学科では一流のスタッフが、教育者の視点からいつも教育プログラムの見直しを行いながら、丁寧な教育を進めています。『化学』の理解を深めるには、講義の現場で五感全部を使って解説を見聞きすることが大切です。さあ、みなさんもよい講義をたくさん受けて『化学』の基礎力を身につけて、社会の一員として大きく羽ばたいてください!